Sの日記(ホラー)第七章5

私は関心した。

れいちゃんの推理が冴え渡る。

「だけど、 その日記はどうなっちゃったのかな? 今、 どこにあるの?」

素朴な疑問をぶつけた。

その問いかけには、 れいちゃんは首を振った。

「誰かが持ち去ったのかな?」

「あるいはいじめた人たちが、 見つけて処分したかもね」

「その可能性もあるよね……」

私はたった一つの望みの糸が、 プツリと切れたような気がした。

れいちゃんの言う通りだ。

いじめた犯人が見つけたとしたら、 それを図書室に置いておく筈が無いのだ。

もうとっくに焼き捨てられているだろう。

「でもれいちゃん、 満月の夜っていうのは?」

「もしかしてだけど、 その日記を挟んだ日の夜が、 ちょうど満月だったんじゃないかな」

「そうか! それで満月の夜になると、 『舌切り雀』が『祥子の日記』に変貌するんだね」

「そういう事だと思うんだけど、 実際に『舌切り雀』が『祥子の日記』に変わる瞬間を見たわけじゃないからね」

そう、 そこなのだ。 私も自分の目で確かめてみないと、 にわかには信じがたい。

だからと言って、 満月になる日に、 図書室から『舌切り雀』を借りるのは怖い。

そして、 ルカのように、 夜になって、 それを試すのはもっと怖い。

それをしないで、 確かめる方法はないだろうか?

電車が入ってきた。

扉が開き、 私たちは乗り込んで、 空いている席に座った。

「ミコちゃん、 とりあえず祥子さんのお母さんが教えてくれた寺崎由香里さんが、 本当に『舌切り雀』を借りてるかどうか、 調べてみない?」

「そうだね。 でも、 そんな古い記録残ってるかな? 5年前でしょ?」

「平成22年だよね。 どこかに保管してあるんじゃない? 倉庫かどこかに。 明日学校で探してみよう」

「ええ……? でも……」

私は、 また三村先生に見つかりそうで、 あまり気が進まない。

今度は蹴りでも入れられそうだ。

「いいよ、 ミコちゃんが嫌なら、 私1人でやるから」

「待ってよ、 やるわよ。 やればいいんでしょ、 やれば」

なんだか、 私よりもれいちゃんが必死になっている。

言いだしっぺは私なのに、 今は、 それが逆転している気がする。

とにかくルカのためだ。 私も一肌脱ごう。

翌、 月曜日の放課後、 私たちは旧校舎の裏手にある倉庫に向かった。

倉庫の鍵は用務員のおじさんに、 適当な理由を言って、 開けてもらった。

大きなスチール製の物置だった。

中に入ると、 埃の臭いが鼻をついた。

天井の蛍光灯を点けると、 視界が開けた。

それでも何だか薄暗い。 周りにたくさんのダンボール箱がある。

「この中から探すの?」

「たくさんあるね」

私は帰りたくなった。

でも、 ここまで来た以上、 やらないわけにはいかない。

「ミコちゃん、 そっち探して。 私はこっち探してみる」

「うん、 了解」

れいちゃんは完全に仕切っている。

私は箱を一つ一つ見ていった。

スチール棚に乗っている物もあれば、 床に積み上がっている物もある。

中味の書類が何なのかは、 箱の表面に書かれている。

それを見逃さないように目で追っていった。

それは、 探し始めて10分ほどで見つける事ができた。

スチール棚の一番上に乗せられていた。

図書室 貸し出し記録と書かれている。

「あった。 これよ」

私はそう言って、 れいちゃんを呼んだ。

れいちゃんはそれを見て、 目を輝かせた。

「間違いないわ。 これよ」

箱の上蓋を開けて、 中味を覗いた。

ノートが何冊か入っていた。

ノートの冊数自体はそれほど多くなかった。

「平成22年のを探そう」

私とれいちゃんは全部を取り出してみた。

今度は難なく見つかった。

「これね」

ノートの表紙に、 平成22年4月~平成23年3月までと記載されていた。

それを開いて、 1月分から目で追っていく。

私たちは寺崎由香里さんが、 いついなくなったのかを知らない。

1月から見ていくしかないのだ。

それは、 5月に見つける事ができた。

5月25日、 舌切り雀、 寺崎由香里、 と書いてある。

「5月だね」

私は言った。

「ということは、 寺崎由香里さんは5月25日に消えたってことだね」

「その日も満月だったのかな?」

私がそう言うと、 れいちゃんは、 「ちょっと待って」と言い、 スマホを取り出して、 何かを検索し始めた。

開いたサイトは、 月の満ち欠けに関するものだった。

過去の満月だった日を調べる事ができる優れ物だ。

れいちゃんはそこに2010年、 5月と打ち込んだ。

そして検索ボタンをタップする。

一瞬で自動計算されて、 ひと月分の月の満ち欠けの状態が出てきた。

今や、 スマホ一つで、 そんなことまで分かるのか、 と感心したが、 それを見つけ出したれいちゃんも凄い。

「えっと、 25日ね」

「あった!」

2人で同時に見つけた。 その日はやっぱり満月だった。

「これで確かね」

私たちはその事だけを確認すると、 逃げるようにして、物置から出た。

「でも、 寺崎さんは、 何であれを借りたのかな? ルカの場合は分かるけど、 寺崎さんはどうしてかな?」

学校からの帰り道に、 私はれいちゃんに言った。

「さあ、 そこまでは……。 本人に訊いてみる事もできないし、 確認のしようがないね」

「寺崎さんは、 祥子さんの話を知ってて借りたのか、 何も知らずに借りたのか」

「そして、 借りてしまった日も悪かったのね。 満月だったから」

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