Sの日記(ホラー)第三章

いつものように、 私は学校への通学路を1人で歩いていた。

そろそろ、 ルカが声をかけてくる頃だ。

でも、 一向に現れない。

私は、 後ろを振り返ったりして、 ルカの姿を探した。

ルカが歩いてくる気配はなかった。 思わず首を捻る私。

風邪でもひいたのかな……。

それとも先に行ったのかな?

仕方なく学校までの道のりを、 1人で歩いていった。

いつも一緒にいるルカが横にいないと、 なんだか寂しい。

教室に入ると、 やっぱりルカの姿はなかった。

今日はお休みかな。

私がそう思っていると、 担任の君塚太一先生が、 血相を変えて入ってきた。

なんだか呼吸が乱れている。

いつもと様子が違うのは誰が見たって一目瞭然だ。

「きりーつ」

学級委員の田村君が号令をかけた。

それを制して、 君塚先生が両手で、 みんなに座るように、 ジェスチャーで促した。

椅子から立とうとしたクラスのみんなが、 無言で座った。

私もだ。

「みんな、 神取のことを知らないか」

君塚先生は唐突に言った。

どういうこと?

「実は今日の朝、 神取ルカのお母さんから電話があって、 ルカがいなくなったそうなんだ」

「え?」

私はつぶやいた。

ルカがいなくなった……?

クラスの生徒はみんな、 ざわつき始めた。

「誰か、 神取の行き先に心当たりはないか?」

君塚先生はそう言ったが、 誰も答える者はいなかった。

それぞれ顔を見合わせて口々に何か言っている。

私の心臓は高鳴ってきた。

ルカがいなくなったなんて……。

どこ行っちゃったの?

「先生! 家出ですか?」

私はたまらず、 そう発言した。

「いや、 それがまだ分からないんだ。 大澤、 何か知ってるか。 お前、 神取と仲が良かったよな」

私は力なく首を振るしかなかった。

「今、 空いている先生たちで、 ルカの事を探し回ってるんだ。 お母さんも心当たりに電話して、 探しているらしい。 先生もこれから探しに行ってくる。 みんなはこのまま授業を受けてくれ」

君塚先生はそれだけ言って、 教室から出て行った。

少しして、 数学の先生が入ってきて、 普通に授業が始まった。

私は、 ルカの事が心配で、 授業内容など全く耳に入ってこなかった。

ルカ、 どこ行っちゃったの?

家出なの?

昨日はそんなこと何も言ってなかったじゃない。

「今日の夜、 満月なんだって」

ルカの言葉を思い出した。

まさか……。

一時限目の授業が終わると、 私は一目散に図書室へ向かった。

廊下を走ってはいけないというルールを、 思い切り無視していた。

途中で何人かと、 ぶつかりそうになった。

ごめんなさい、 と言い残し、 私は走るのをやめなかった。

旧校舎に入り、 図書室へ飛び込んだ。

中に入ると、 私は小走りになりながら、 Cブロック3番の書棚を目指した。

そして、 そこに立ったとき、 私の体は硬直した。

ない!

『舌切り雀』が……ない。

ルカ……。

私は図書室のカウンターの中に入って、 貸し出し記録ノートを開いてみた。

そこには誰がいつ、 どの本を借りたかと、 返却期限日が書いてある。

私は指で、 その記録を追った。

○月×日(昨日)、 舌切り雀、 神取ルカ。

あった!

ルカ……、

やっぱり。

昨日の放課後、 事の真相を確かめるために、 ルカは舌切り雀を借りたんだわ。

でも、 本当にいなくなっちゃうなんて……。

消えちゃったのかしら? マジで?

あの話は本当だったの?

どうしよう……。

私はどうすればいいの?

とにかく、 ルカを捜さないと。

いや、 何か手がかりを掴まないと。

こうなったら、 のんびり授業など受けている場合ではない。

私は、 教室に戻って、 隣の席の近藤里美に体調が悪いから早退すると言って、

自分の荷物を持って、 学校を出た。

まず、 行くところはルカの自宅だ。

ルカの家には何度も行ったことがある。

ルカのお母さんもよく知っている。

ルカママは、今、 ガーデニングにハマっていて、 庭にはプランターがいっぱいだ。

そして、 夕方になるとスーパーに飛んで、 半額になった「おつとめ品」を狙う。

が、 今はそんなことはどうでもいい。

私自身、 探偵ではない。

こんな時どう動いていいのか分からない。

でも、 ルカのお母さんに会わなきゃ。 そんな気がした。

ルカの家に到着し、 小さな小洒落た門扉を勝手に開けて、 玄関ドアも勝手に開けた。

鍵が掛けられていない事は知っていた。

無用心だが、 そんな無頓着さに今は救われた。

玄関に入ると、 私は大声で、

「おはようございまーす」

と言って、 お母さんを呼んだ。

玄関には、 いつもルカが履いている靴が、 揃えて置いてあった。

持ち主のいなくなった靴が、 可愛そうに見えた。

「あ、 ミコちゃん」

リビングからルカのお母さんが出てきた。

顔は青ざめて、 正気がない。

髪はボサボサで、 お化粧もしていない。

「ルカがいなくなったって聞いて、 心配で来てみたの」

慣れたお母さんなので、 私もタメ口だ。

「そうなのよ。 ミコちゃん、 何か心当たりは無い?」

「それが……」

私は首を振った。

『Sの日記』の話は、 今はすべきではないと思った。

「ルカの部屋、 見せてもらっていい?」

私は、 お母さんの許可も得ずに、 階段を駆け上がった。

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